ARTIST STATEMENT

学生時代、私は人物画に没頭していました。
当時、人物画は私の想いをストレートに映し出す手段であると考えていました。
また、指導いただいた人物画家である大学教授への憧れも手伝って、このジャンルに強く惹かれていました。
ただ、自分の内なるエネルギーが満ち溢れている時は作品創作がスムーズでしたが、その熱意が落ちると、筆も自然と止まってしまうこともありました。
それはまさに「ネタ切れ」という状態でした。
そんなある時、カフェで課題レポートを作成中に描いたスケッチが、後に日展で初入選する作品となりました。
この経験をきっかけに、私は風景画の制作に興味を持ち始めました。
風景画では、その場の雰囲気や感じた情報を形にするため、作品には自分の主張と現場からのインプットが半々に混ざり合います。時には片方への比重が極端に大きくなりますが、現場から汲み取ったイメージを具現化させる風景画は描いていて心地よいものがありました。
現在、私は訪れた風景から受けた印象を作品に映し出し、そのイメージを通じてメッセージを伝えたいと思い、制作しています。

風景画を制作する際のプロセスは、初めに「ファーストインスピレーション」としてその風景を絵にしたいと感じる瞬間から始まります。
次に、その場に時間をかけて滞在し、現場から得られる情報を集めることで、インスピレーションを深めていきます。
例えば、ファーストインスピレーションは、火を点けるためのチャッカマン(現代ではあまり使われないかもしれませんが)のようなものです。

そして、その後の情報収集は、点いた火に薪をくべて炎を大きくすることに例えられます。

最初のインスピレーションがなければ、火は起こらず、情報収集がなければ、火は大きくならずにすぐ消えてしまいます。
作品を根気強く完成させるためには、これらのステップが重要です。

技法

日本画には伝統的な技法が多々ありますが、その中でも近年使用しているものは「彫塗」と呼ばれる技法です。
下書きで描いた線を残しながら絵の具を置いていくという技法で、特選の作品以降はこの技法を中心に描いています。 

熊本在住のころ、特に学生時代は「ドリッピング技法」と呼ばれる技法をメインに制作をしていました。
和紙をはったパネルを床に置き、その上に絵の具をまいていきます。
様々な色をまくことにより表面に変化が生まれます。

材料

和紙

絵を描く支持体に私は「和紙」を使用しています。「日本画とは何か」にも通じるところがありますが、絵画においては支持体の選択によって描くジャンル分けがされています。
和紙を使用すれば日本画ですし、キャンバスを使用すれば洋画となります。
これは過去の先人たちが残してきた作品の蓄積によって基準が構築されているものなのですが、現代はこの基準に関しても自由であると考えることが一般的となってきています。
とはいえ、私はこれまでの先人たちが残してきた伝統的な和紙を使用することが日本画であると考えます。
それは先人たちへの尊敬でもあり、伝統を継承し、先人たちのように魅力的な作品を制作したいという思いでもあります。

また、日本画は常に周囲の様々な要因を受ける絵画様式です。温度や湿度によって画材の扱い方が変化しますし、表現も変わっていきます。「全てが作者の思い通りにならない」というのも日本画の魅力の一つではないでしょうか。

岩絵具

 岩絵具(いわえのぐ)とは、主に鉱石を砕いてつくられた粒子状の絵具で、絵画、彫刻、工芸、建築に用いられる伝統的な顔料である。

天然岩絵具

地球上に存在する多彩な鉱物を粉砕・精製したものが古くから天然の顔料として用いられてきました。材料を天然のものに依存し、精製前の選別を機械や化学的処理によらず行うため、その多くは高価です。
原料とする鉱石などの違いだけでなく、水に入れて上澄みをすくって沈殿の時間差で粒子の大きさをより分ける、焼いて酸化させることにより黒っぽい色を出す、水晶を混ぜることで発色を鮮やかにするといった工夫で、様々な色合いを生み出すことができます。

人工的な岩絵具

天然岩絵具の原石の希少価値、高価格、有毒性、扱いのむずかしさ、そして色調の少なさといった天然鉱物の欠点を克服するべく、近代に入ってから新しい岩絵具が開発されるようになった。それまで新しく中間色をつくる際は、胡粉に染料を染めつけて中間色をつくっていた。

新岩絵具

人工的に作られた色の塊である「新岩」を、天然岩絵具と同じように粉砕・精製してつくられた岩絵具です。ひとことでいえば着色ガラスを粉末状にした絵具。天然岩絵具のように、焼いても色の変化は起こらない。

合成岩絵具

粒のもととなる「水晶末」や「方解末」に、色のもととなる顔料や染料を付着させた岩絵具。従来の岩絵具になかった蛍光色やパステルカラー、洋画顔料を備えるが、耐光性に劣る傾向がある。同種の合成岩絵具どうしでは比重が同じなため、直感的に混色ができる。

泥絵具 水干絵具 胡粉

一般的には、胡粉若しくは白土を染料で染着したものである。